大井町豊後屋
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体に疲れを感じる。
帰宅ラッシュ帯のこの時間には珍しい。
空いた席に座る。
まもなくお年寄りがやって来て譲る。
ありがとうございます、とお辞儀が深々。
屈伸運動しただけだったか、と苦笑い。
最寄りの駅に近くに連れて人が増える。
品川を過ぎると最悪だ。汗が滴る。
ぎゅうぎゅうの車内から押され押されてホームへ。
まるでところてんの気分だ。
どっと来た気怠さを連れて、金曜の熱気に流される。
飲もうや。少し。
少しな。
こういう時に深く飲むと大抵朝だ。
何度も踏み続けた同じ轍を次は踏むまい。
策は講じてある。
2階へ続く階段。
飾られた暖簾を左へ。
扉を横に引く。
「いらっしゃいませ。」
慣れた右人差し指を高らか。
案内された席には椅子がない。
深酒せぬ策は立ち飲み。
サクッと飲んで帰るが吉。
ヒットアンドアウェイだ(?)
キャッシュオン式のお店。
はじめに予算を決めておけるのも良い。
ありったけの小銭と千円を取り出す。
これで十二分なのがありがたい。
このメニューを見よ。
悲しきサラリーマンの味方。
素敵だ。
ホッピーセットと塩辛が来る。
450円を渡す。
ぐびっと飲む。
この瞬間のふわっと来る感じがたまらない。
やっと今日が始まった。
そして、特筆することのない塩辛を噛む。
それが良いのだ。
壁に貼られた手書きのメニュー群と注意書き。
それが良いのだ。
店内の装飾。
脚立で一個一個画鋲で止めたんだよ。
なんか涙出るだろ。
それが良いのだ。
レバーフライが来る。
ハーフだから200円を払う。
レバーフライを食べに来たのだ。
ソースがびったりの衣にからし。
レバー特有の食感と味が広がる。
ホッピーが合うの何の。
これが200円だよ?
豊後屋ではレバーフライを食え。
これは後世に残るべき言葉。
たまらん。ホッピーが減る。
すまんな。ご主人。
これだけでホッピー開けちまって。
千円札は財布に返してしまった。
せんべろどころのコスパじゃないわ。
素晴らしい。
けどもまあ、ホッピーセット開けると流石にちょっとほろ酔いだ。
あー。座りて飲みてぇな。
誓いを忘れて、も一杯いっちゃうか?
ヒットアンドアウェイなんて高尚な策だ。
愚かなファイターはここぞとばかりにハシゴに繰り出す。
素敵な時間をありがとう。
ホッピーセット300円
中200円×2
塩辛150円
レバーフライハーフ200円